それでも、すき。
「………、」
そんな事を考えてる反面、香椎くんに言われた言葉にあたしは何の返答も出来なかった。
“―――美人なのに”
そう言われる事は、昔から多くて。
自覚がなかったからこそ、言われる度に『あぁ、あたしって美人なんだ』と思った。
けど、中学に上がる頃
その意味を、自分の持つ外見をあたしはようやく理解したんだ。
『顔がいいからって意気がるんじゃねーよ!』
『その顔で何人の男にお金もらったの?』
毎日毎日、休むことなく叩きつけられる暴言の数々。
みんなは言う。
あたしの外見を、憎み嫌う。
―――消えろ、と。
「…あたし、は……。」
震える声が、あの頃の感情を呼び覚ます。
フォークに刺さったままのリンゴにゆっくり視線を落とした。
「…あたしは、この顔が…嫌い。」
大嫌いだった。
汚いモノを見るような目を投げて来るクラスメイトも
知っていて、何もしてくれなかった教師たちも
気付いてもくれずに、この顔を与えた親も
ずっと、大嫌いだった。
―――でも。
一番嫌いなのは、何も言い返せなかった自分。