My Sweet Sweet home
「ゆか何でも好きなもん買ってやるよ。」



大学の生協につくなり拓兄はそう言うとニヤリと笑った。



「気前いいね。」



「おう。ちょっと臨時収入。」



言いながら拓兄は片手をクイクイっとひねった。



あたしはその意味をすぐさま理解した。



「は?あんたパチンコ行ってきたの?講義は?」



「いやあ、お前送った後2講までの時間どうっすかなあって思って行ったんだけど、やって一時間もしないうちに大当たりでさ。確変で止まんないわ止まんないわ。2講の事すっかり忘れてて気づいたら昼じゃん?みたいな。」



「ただのアホじゃん?」


そう言ってあたしはパンコーナーに向かう。



「まあいいじゃん?なんでも好きなもん入れろ!」



拓兄はあたしの肩をバシッと叩いた。



「お兄ちゃんふとっぱらー!」



はしゃぐ振りしてあたしも拓兄の肩をバシリ。



そうやって2人じゃれ合っていると、ふと視線を感じた。



少し離れたお弁当コーナーのところに拓兄の元カノ、もとい嫌がらせメンバー司令塔といつもの友人がいた。



友人は相変わらず芸もなくあたしを睨むだけだった。



一方元カノの方は、彼女の中で何かを決断させるとても決定的なものを見たとでも言うような蒼白な、けれども決意に満ちた表情をしていた。



目を凝らし彼女の表情をよく見ようとしたけれど、お昼どきの生協は学生でごった返している。


すぐに人の群れで彼女らは見えなくなってしまった。
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