My Sweet Sweet home
あぁそうだ。元カノの名前は綾だ。思い出した。


こんな状況にも関わらずあたしはぼんやりそんな事を思った。



「聞いてんのかよ!?」


「離してくださいます?」



怒りに叫ぶ友人に首をかしげて甘える目つきでお願いしてみた。



男の人(特に拓兄)にお願いする時に使うあたしのとっておきの表情。



ただ今回相手は女。効果無しどころかまったくの逆効果だった。



「ふざけんなよ!あんたのその拓海くんに媚び売る態度のせいで綾は別れる事になったんだよ!」


その言葉に綾は突然涙ぐんだ。



横にいた女は、綾の肩を抱き、露骨にあたしをキッと睨んだ。



「おっしゃる意味がわかりませんけど。恋愛は本人同士の事なので。あたしに怒りを向けるのはただの八つ当たりにしか思えませんけど。」



「はあ?何すました事言っちゃってんの!!あんたが雷怖いなんてふざけた事言ってから拓海くんと綾は別れたんだよ!!」



あたしの胸ぐらをワサワサと揺すりながら怒りにまかせたように友人は叫んだ。



「…どういうことでしょう?」



今の言葉で別れた原因をなんとなく察してしまったけど、あたしはしらばっくれ続けた。


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