騎士戦争


――雨が弾く


失いたくないモノ

ないことがこんなにも寂しいとは


――地にある足が砂を強く踏んで


誇りがない自分は、生きる資格もなく

人を殺す理由が醜いだけの殺人者は


――微かなかけ声

降り落とされたそれの行き先は



「だから、俺は……」



響いたのは製鉄が重なった重低音


加え、男の驚きも聞こえた


膝をついたまま、己で自分の歯を砕くぐらいの強さでクロスはこらえた


失いたくないモノがない自分でも、この巨剣を止める理由があったから



“刺される前に刺す”



クロスの最大の巨悪にして、最高の――


「だから、俺は“生きていける”んだ……!」


生きる理由


生きているからこそ死にたくなどない


単純な答えだが、クロスにとっては大きなきっかけとなる


< 58 / 73 >

この作品をシェア

pagetop