粉雪2-sleeping beauty-
「…あれから…もぉすぐ2年だな…。」


『…うん…。』


千里の煙草は、いつの間にか短くなっていた。


指の隙間からそれを奪い、代わりに灰皿に押し当てた。


そして自分の煙草を抜き取り、落ち着けるように火をつけて吸い込んだ。



「…あの部屋から…出ろよ…。」


『―――ッ!』


俯いていた瞳は、瞬間、大きく見開いて俺の瞳を捕らえた。



「…出て、俺の部屋に来れば良い…。」


しっかりと揺らぐ瞳を見据え、言葉を続ける。


「…お前を俺のものにしようなんて、考えてねぇから…。
だけど、そろそろあの部屋から出て欲しい…。」


『―――ッ!』



コイツは、あの部屋に閉じこもってるから、

いつまで経っても隼人さんに縛られてるんだ。


前にも後ろに進めず、ただ思い出の中だけで暮らしている。


誰も居ないはずの部屋で、隼人さんの面影だけを探し続けてるんだ。



『…そんな酷いこと…言わないでよ…。』


唇を噛み締めた千里の瞳からは、一粒の涙が落ちた。


か細く震える声は小さいはずなのに、俺の世界に大きく響く。


それを見た瞬間、抑え切れなくなった。



「酷いのはどっちだよ?!
もぉわかってんだろ?!
俺らは…俺ら3人は、このままじゃダメなんだよ!!」


『―――ッ!』


千里の溢れ出る涙は、もぉ止められなかった。


ただ悔しくて、握り締めた拳が熱くなった。


胸が苦しくて、息さえ出来なくて。


本当に、死んでしまいそうだった。



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