粉雪2-sleeping beauty-
「…なぁ、千里…。
今度だけは、ちゃんと聞かせてくれよ。
お前の答え。」


『―――ッ!』


俺の言葉に、千里は顔を強張らせながら首を横に振った。


答えるのが嫌なのか、俺のところに来るのが嫌なのか。


…これじゃ、何も分からない…。



出そうな言葉を飲み込み、代わりに煙と一緒に吐き出した。


煙草の味なんて分からないほど、千里の嗚咽に息苦しくなる。



「…頼むから…何か言って…。」


俺の言葉に、ただ沈黙だけが支配した。


心臓の音は、漏れ聞こえてしまいそうなほどに大きい。



『…嫌だよ…。』


「―――ッ!」


ポツリと呟いた言葉に、瞬間、

それまで音を立てていたはずの心臓が、止まったのかと思った。




「…それが…お前の答え…?」


そしてゆっくりと、千里の向き直る。


だけど千里は、また何も言ってくれなかった。


沈黙ばかりが支配し、押し潰されそうになる。


それが答えなのかは、俺にも分からない。


だけどもぉ、待てなかった。


俺から切り出す以外、他になかった。




「…ありがとな、千里…。
俺に見切りつけてくれて…。」


『―――ッ!』


瞬間、千里の顔が強張った。


何か言いたそうに動く唇に、だけど俺は、振り払うように優しく言葉を続ける。


声が震えて、目頭が熱くなって。


泣いてたのかもしれないし、泣いてなかったのかもしれない。



「…何も言うな…。」


『―――ッ!』


「…頼むから、引き止めるようなこと言うなよ…。」


千里の顔は悲しそうに歪み、見ないようにと目線を落として煙草を消した。



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