乱樹(らんじゅ)の香り


麗は、寝室を這いまわって、片方のピアスを発見した。

落としたお陰で、何度か、ここへ来られた。

ありがと。

ピアス。

感謝を込めてピアスを見つめると麗は立ち上がった。

「あった。ありがと、タカちゃん」

見つけたピアスを指先につまんで揺らせてみせる。

「そう。よかった。じゃ、出て?」

開いたドアにもたれて、兵庫は冷たく言う。

麗は、ゆっくりと部屋を見回した。

隅に立てられたボンヤリともる間接照明。
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