乱樹(らんじゅ)の香り
わざわざ懐中電灯を貸してくれたのは、灯りがそれしかないせいだった。

麗は、兵庫のそばへ行き、懐中電灯を差し出した。

兵庫が手を伸ばしてくる。

麗懐中電灯をその手から遠ざけて、兵庫の身体に腕を回した。

そのまま、自分の身体を寄せる。

兵庫は、深く、吐息をついた。

「もうちょっと、麗と精神愛、したかったんだけど」

「何?それ」

「いや…」

「それで、タカちゃん誰にも取られない?」

「自信、ない」



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