駆け抜けた少女【完】
なめきった態度と矢央に手を上げようとした力士が芹沢の怒りに触れたのは、その直ぐ後だった。
――――バチンッ!!
力士を芹沢の鉄扇が襲う。
ドサッと、その場に力士が倒れた。
「武士に対し失礼極まりなし! 一度目はこの程度にしてやるが、二度目はないと思え」
芹沢は既に動けずにいる力士にそう述べると、見向きもせずに歩き出した。
さすがにやり過ぎじゃないかと力士を心配した矢央だったが、先を急ぎたい気持ちが先立ち、力士をその場に残し進む。
これで終わりのように思われたが、これが発端で大事になるとは思っていなかった矢央達は、北新地にある住吉屋で休息をとることになった。
斉藤は島田が呼んで来た医者に診てもらい薬を処方され、一室で休みを取る。
その隣の部屋では、先程のことも忘れ上機嫌な芹沢達は酒宴を始めてしまっている。
「まったく、斉藤さんを休ませるために来たのに、またお酒飲んでるし」
「まあまあ、いいじゃないですか。 斉藤さんも、こうして落ち着いたわけですし」
眠っている斉藤の傍で、襖を呆れ顔で見つめた矢央に沖田は笑みを向けた。
「じゃあ、沖田さん達も飲んで来たらどうです? 斉藤さんは、私がみてますし」
「永倉さんと島田さんは既に行ってますねぇ」
「早っ!」
「あはは! 永倉さんは特にお酒好きですからねぇ」
はあ―…と、溜め息が部屋に響いた。
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