駆け抜けた少女【完】
「あなたは私、私は…あなた」
「平助っ!?」
障子から姿を見せた藤堂は、永倉の隣に膝を下り正座した。
その顔は真剣なものだった。
「涙を流したかと思えば、次には笑ってた……矢央ちゃん、悪霊にでもとり憑かれてんすかねぇ」
「悪霊ねぇ、んな現実味のねぇこと」
「なくはないっすよ。
現実味の話をすんなら、既に摩訶不思議な出来事は起こってる」
矢央は、百五十年程前の未来からやって来ている。
最初はあまり信じていなかったが、藤堂や永倉、沖田は矢央と同室になり毎日をともに暮らすうちに、この時代では有り得ないような話を聞いてきた。
たまたま持っていた、動かないケータイやポケットにしまっていたリップクリームなど、未来での道具や生活の話を聞いていると、嘘を言っているようには思わない。
「こんくらいの小さな箱型の物で、遠く離れた相手とも簡単に連絡が取れるそうっすよ」
「移動手段も、徒歩や馬ではなく"じどうしゃ"とかいう乗り物などで、直ぐに行きたい場所へ移動できるとか」
「わけわかんねぇ話だな、そりゃ……」
自分の目で見たものしか信じない土方と違い、素直な沖田と藤堂は、その話をキラキラと瞳を輝かせながら聞いていたものだ。
それだけで、というわけではないが、それでも矢央を見ていれば嘘をついてはいないことはわかる。
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