駆け抜けた少女【完】



文久三年九月十八日、その日の沖田はやけに疲れた表情を浮かべていた。


朝から、縁側の柱に背をもたれさせ空をずっと見上げている。


幾度か話しかけようかと迷った矢央だったか、声をかけようとする度に待ったをかけられて、忙しく動き回っていた。






「………ふふっ。 今日の矢央さんは、忙しそうだ」


あっちこっち廊下を行き来する矢央を見てクスリと零す。


「ねぇ、永倉さん。 そろそろ仲直りしたらどうです?」

「……別に仲違いしてる覚えはねぇぜ」


沖田がもたれる柱の反対側に、同じように立ったまま背を預けている永倉。


「ふうん。 だったら、どうして矢央さんを避けてるんですかぁ?」

ヒョコと永倉の方に顔を覗かせ、上目使いで永倉を観察する沖田。

そんな沖田をチラッと確認して、目を逸らす永倉。



「……ダメですよ。 仲直りのきっかけを相手が作ってくれている間に仲直りしておかないと、きっと後で後悔します」


矢央が壬生浪士組に入隊した日、二人は言葉のすれ違いをしたまま今まで過ごしてきた。


同じ時を同じ部屋で過ごしはしていたが、二人きりではないので仲直りはできていないまま。
矢央は永倉を気にして、チラチラと伺ってはいたものの、永倉がそれを避けてしまっていた。

どうしていいか分からない。


それが本音だった。



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