駆け抜けた少女【完】
どちらかといえば永倉は壬生浪士組の中でも女子には優しく、大人で落ち着いた印象があり、女子に対してはキレることは先ずはない。
そんな永倉が、何故か矢央を見ていると一々勘に障って仕方ながないのだ。
駄目だと注意するのに聞かないからか、危ないことに自ら首を突っ込むからか。
永倉自身も気付いている。
未来から来た少女が心配で仕方がないのだと。
だが大人な女子なら優しく言い聞かせるだけだが、まだ子供な矢央だと、どうしても怒鳴りつけてしまう。
まるで近所の悪ガキを叱るのと同じだった。
「素直に言えばいいじゃないですか」
「あ?」
「心配だからと言えばいいじゃないですか。 永倉さんも平助さんのように、矢央さんに素直になって優しくしてあげればいいじゃないですか」
「はんっ…。 平助がどうした?」
沖田は、今朝のことを思い出した。
朝食を食べさせるため矢央を起こしに部屋に向かった沖田は、自室の前で立ち止まった。
そこで沖田が見たものは、矢央を抱きしめる藤堂の背中。
「平助さんは入隊したことに対して心配だと伝えていましたよ。 けれど、彼女の意を尊重し仲間として迎えてました」
藤堂が矢央に好意を抱いていると気付いた沖田は、複雑な想いだった。
あの状況を言葉に出せないのは、この胸に支える"何か"のせいだ。
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