駆け抜けた少女【完】
そろそろ日が暮れる。 以蔵が帰ろうと口にしかけた時だった。
「矢央。 やっと見つけたぜ」
矢央は以蔵を見上げたまま固まっていた。
その訳はその声の主が誰なのかも、以蔵が彼を見て鋭く眼を細めた理由も分かってるからである。
「さてと…その風貌は…。へえ、お尋ね者同士が一緒にいるのは問題だな。 訳を聞かせ……ちゃくんねぇよな、やっぱし」
――カチャリ…
前と後ろ、両方から鞘に手をかける音がした。
止めて……。 と、口にする前に、矢央は今立つ場所とは反対側になる方へと強い力によって押された。
「いっ……。 待ってよっ!」
―――ガキィィィンッッ!
打ち付けてしまった腕の痛みに耐えながら体制を整えた時には、矢央の前で互いの白刃がギギッと不気味な音をたてていた。
「あんた人斬り以蔵だよな? わりぃが、ここんとこ俺は機嫌が頗る悪くてよぉ……手は抜かねぇぜ? つぅわけでっ!新選組二番隊組長永倉新八、参る!!」
浅葱色の羽織りが風に舞う。
久しぶりに見た永倉は、矢央を見ることもなく、ただ以蔵を睨みつけていた。
ギンッ! ガッ! ドンッ!
速さでは負けていなかった以蔵だが、体格差で永倉に負けていた。
一瞬の隙を見て、永倉が以蔵の腹に蹴りを入れ、以蔵はたまらなく膝を折る。
「止めて下さいっ! 永倉さんっ!」
「お前は黙ってろ! 総司、お前は後ろを取れ、絶対に逃がすんじゃねぇぞ!」
その名前を聞いて初めて、もう一人の存在に気づいた矢央と以蔵。
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