駆け抜けた少女【完】

「あっ、あの何処の何方か知りませんが助けていただきありがとうございました!」


ホッと安心している場合ではなく、またしても見知らぬ男性に助けてもらったと頭を下げだした矢央。


そんな矢央の体は水にびっちょり濡れてしまっていて、見ているだけで寒そうだと男は自分が着ていた羽織を矢央の肩にかけてやった。


顔を上げた矢央の目の前には、長い黒髪の綺麗な男がいる。


「女子が体を冷やしちゃ駄目だ。 ええ子が産めなくなるよ」

「へ? いや…子供って…。 てか、近いです」

「ん〜。 新選組相手にやたら威勢がいい女子だと思って見物していたら、男を川へ落とすわ自分も落ちるわで、一体どんなごつい女子かと思っていたんだが…」


男は前から羽織をかけてやったままの体制を崩すどころか、赤く染まる矢央を面白がり更に顔を近づけてきた。

鼻と鼻が擦れる、そんな距離だ。


「フフッ。 えらく可愛い女子じゃないか。 まるで子猫だね」

「こ、子猫?」

「さぁて、それじゃあ追っ手が追いついて来る前にさっさと逃げちゃうよ」

「え、追っ手? あ……」


ようやく離れた男の背後に小さく見えた彼等の姿。


沖田さん永倉さん、怒ってるかな……。


だけど、ごめんなさい。と、矢央は小さくなっていく二人に心の中で謝った。


まだ捕まるわけにはいかない。

帰る理由を見つけてないのだから――――。

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