駆け抜けた少女【完】
――ザバッ! と、男の力によって助け上げられたのは川に浮かぶ舟の中。
水を飲んでしまった矢央は、ゲホッゲホッと咳き込んでいると、また誰かが舟に上げられた気配に其方を見た。
それは自分が突き落とし捜していた以蔵で、彼は意識を無くしているのかピクリともしない。
「以蔵さんっ! 死んじゃ駄目っ!」
慌てて近寄ると、
「コラッ! 舟の上で暴れるな!俺達も川に落とされてしまうぞ」
「うげっ!」
襟首を掴まれ座らされた矢央は、以蔵を確認しようと目を向ける。
「大丈夫じゃ。 彼は生きてる。気を失ってはいるが、そのうち目を覚ますさ」
「よ、良かったぁ―…」
本当に良かった。
以蔵を助けるために川に落としたのに、これで以蔵が死んでは坂本に会わす顔がない。
それよりも、以蔵に申し訳ない。
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