駆け抜けた少女【完】
藤堂は思い出を語ってみたものの、肝心なその先の話をするのを戸惑った。
この何も知らない少女に話してもいいものか。
間者ではないと思っていても、今はまだ自分達は深い入りしていいものなのか。
それに……
目が綺麗なんだよな、と困惑気味に視線を反らした。
黙り込んだ藤堂をじっと見つめる大きな瞳は、まだ善にも悪にも染まってない"白"で、つまり少女を純粋だと表している。
もし少女の言う未来が殺人を身直に感じない平和な世だとするならば、尚更話すのを戸惑うのだ。
「あの、藤堂さん?」
「あっ、えっとねぇ…」
話しすぎたな、と思っていたところだった。
「平助、何やってんだ。お前、巡察の交代だろぉが」
「え、あ! 忘れてたー!」
門の方からやって来たと思われる永倉に、そう声をかけられた平助は慌てて立ち上がった。
朝稽古を終え部屋へ帰って来たのは稽古着を着替えるためだった平助は、すっかり見回りの交代を忘れていたことを思い出す。
「お前なぁ…。隊士達が探してたぞ」
「うわっ、やばっ! 新八さん教えてくれてありがと!」
ささっと着替えを済ませた藤堂は呆れ顔の永倉の横を走り抜ける時、ポンッと肩を叩くと、
「助かったよ」
と、隊士が待つ場所へと急いでかけていく。
その後ろ姿を見送った永倉はため息を吐いた。
ーーー後始末できねぇなら、最初から言ってんじゃねぇよ。