駆け抜けた少女【完】
薄紫色の着物と切なげに歪む表情が、夕日に栄える。
今屯所に残っているのは、このところの流行病で床に伏せている隊士と総長の山南。
そして、矢央とお華だけ。
居心地の悪さを感じたが、矢央は一つ気になることがあり、お華に尋ねた。
「どうして、お見送りしなかったの?」
「お見送りですか?」
矢央に向けられた顔は、儚く微笑んでいた。
とても綺麗で、それでいてとても悲しい笑みで。
「私までも出向いては、彼ら以外の方が驚いてしまうでしょう」
「あっ…」
そう言われたらそうだ。 瓜二つの顔が並べば、何事かと騒がしくなってしまう。
ならば己はお華にとって、とても酷いことをしたのかもしれないと睫毛を揺らす。
お華は彼らに会いたくて、彼らを守りたくてこの世に舞い戻ってきたのに、彼らを見送ることが出来なかった。
己よりも、遥に強い想いで此処にいるはずのお華に、なんと声をかけたらいいのか分からない。
「矢央さんは分かっていない」
「え?」
「彼らの身に危険が迫っています……」
「そんなことっ…分かるよ…」
拳を握る矢央から視線を逸らし、己の震える手に視線を落とす。
「ならば、何故に見送るのです。 危険だと分かっていて、何故彼らを止めてくれないのですっ!?」
体に突き刺さるような威圧感。
ピリピリと肌が焼けるようだった。
.