駆け抜けた少女【完】

こんなお華は、見たことがない。

抑えきれない衝動に、己自身制御できていなかった。



「あなたを利用して、この世に戻り私がしたかったこと」

「………」

「それは、あなたのように彼らを見守ることではなく、彼らを新選組から抜けさせたかったのです」


お華の手に、血の爪痕が幾つも残る。

ガリッ…ガリッ…


「新選組にいる限り、彼らは救えない。 数多くの血が、また流れます。 そのことが、今後彼らの絆に溝を生む。 離れゆく彼らを見たくないっ!」

「お華さん……」



未来が見えるお華は、いったいどんな未来が見えているのだろうか。


この乱れようが、良い方向には向いていないことは分かってしまう。


胸が痛い。 心臓をわし掴みにされたように痛い。


「あなたが帰って来なければ良かった。 勝手なことを言うなどと思われるでしょうね。
でも、あなたがいると……私は…私は……」

「あのね、この先どんな未来が待ってるか分かったとしても、あの人達は新選組を去ることはないよ」


涙を流し、膝から崩れ落ちたお華を見下ろした。

一瞬、伸ばしかけた手は宙を舞いギュッと握りしめられる。


慰める必要などない。

確かにお華の気持ちも分かるが、それは彼女を許すことに繋がる。


今はまだ、お華を許すことは出来ないのだから。



「だって、新選組って近藤さん達が作ったようなもんでしょ。
斎藤さんが言ってた、誠の志あって我々は此処に集ったって。 あの人達は、目指す場所がある。 そのために、新選組っていう居場所と地位がほしくて此処まで来たんだと思う」

「あなたに、何が分かるのですかっ」

「分からなかったよ。 死ぬかもしれない恐怖と、人を殺める恐怖があっても此処に居続けるって言ったあの人達の気持ちなんて分からなかった。
分かろうと…しなかったから、分かり合えなかったんだよ」


所詮は他人の気持ちなんて分からない。

しかし、知る努力は怠ってはならないと、身を持って知った。
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