駆け抜けた少女【完】

若くして家族を失い、また若くしてこの世を去ってしまった少女。


その少女の短い生涯が、自分たちと過ごした僅かな時が、ほんの少しでも幸せだったと信じたい。


守ってやりたかった小さな手が、最期は血で染まり、頬は涙に濡れていた。


しかし、死に顔はとても美しく穏やかなものだった。


それを見て、残された者たちは少なからず救われたのだ。



そして、思った。


惣司郎を守ってくれてありがとう―――と。



「お華」

「惣司…郎君……」


支えてくれていた土方の手を「大丈夫です」と押しのけた沖田は、ゆっくりとお華に歩み寄る。


震えるお華の体を、そっと腕の中に包み込んだ。



「君を守ってやれなくてごめん。 側にいてやれなくてごめん。 君の…願いを聞いてやれなくて…ごめんっ」

「惣司郎…く…」

「私はもう、惣司郎ではないんですよ」


あのまま殺されても良いと思った。

それで、お華が救われるならば。


だが沖田も気付く、それでは何も変わらない。


過去に縛られたままの自分が、お華を苦しめているのだろうと気づき、沖田は抱き締める腕に力を込める。



「私は、沖田総司。 泣き虫だった沖田惣司郎ではなく、新選組一番隊組長沖田総司なんです」

「総司……」

「はい。 私は、あの時決めたんです。 お華のような、幼くして命を落とさせなくてすむように、私は強くなって手の届く範囲の者たちを守ろうと。
そして、その場を作ってくれたのが近藤さんです。 ですから私は、何があろうと、鬼になろうと新選組であり続ける。 近藤さんの行く道を、共にと決めたのです」



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