駆け抜けた少女【完】
沖田の胸元に、幾つもの涙の染みが消えては浮かびを繰り返した。
「待っていて下さい。 私が、お華のもとへ行く日まで」
「っ…総司…君……」
この世に残った者は、いつまでも命を落とした者を想い涙していてはいけない。
過去を打ち払い、前へ進まないと亡くなった者も救われず、あの世に行くのを躊躇ってしまうのかもしれない。
「お華さんは、迷ってただけなんですよね」
沖田らを見ながら、矢央は呟いた。
それに反応した永倉は、穏やかに微笑む。
「ほんと、お前らは似てるな」
生き方に迷った矢央と、死に方に迷ったお華。
立たされた場所は違えど、迷いの根本的な場所には仲間の存在が大きく関わっている。
「そりゃあ、私はお華さんの生まれ変わりですからねぇ」
「だったら、お前があいつの分まで長生きしてやれ」
「土方さん!? あっ、そういえば、二人共足大丈夫ですか?」
ぬうっと現れた土方に、驚き飛び退いた矢央は、思い出したかのように尋ねた。
二人は苦笑いしながら「いてぇよ」と、一言吐き捨てた。
「矢央さん」
「ん?」
お華に名前を呼ばれた矢央は、永倉と土方の間から、ひょこっと顔を覗かせた。
穏やかに微笑むお華を見て、安堵の笑みを浮かべる。
「私も決めました。 あなたとは違う場所で、彼らを見守ろうと」
「そっか」
「私は空の上で、あなたは地の上で」
「うん。 ねぇ、お華さん。 ありがとうね、みんなに出会わせてくれて」
予想外のお礼に、さすがのお華も驚き目を見開いた。
人らしい、そんな表情を見たことがなかった矢央は可笑しそうに笑う。
.