だから、君に

「で、どうするんだ」

少しずつ根岸の家が見えてくる。

この小さな街で有数の名家。
どっしりとした門構え、歴史を感じる古びた木造の家屋が、根岸の生活する場所だ。

「……もう、あの人には会いません」

「……そうか」

「通報するって言われてしまいましたし」

「うん」

「それに」

ほう、と息をついた。

「わかってたから。あの人は初恋の人だったけど、本当に大事にしなきゃいけない人が他にいること」

「……うん」

「本当はずっと、わかってたから」

そう言って微笑む横顔は寂しそうでもあり、愛おしそうでもあった。


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