妖魔03(R)〜星霜〜
幼女の倒れる原因を作ったのは私で、手当てを行わなければならない。

何も行わなければ幼女はどうなるのか。

痛みを感じていなさそうな幼女だが、出血多量で死ぬかもしれない。

人間は作られた物だ。

だから、壊れないわけがない。

放っておけば良いのに、微笑みを見て変化が出たのか。

いや、他にも理由がある。

幼女は何も思ってなさそうだが、私は罪を軽くしたかったのかもしれない。

目が覚めた時に、幼女に許してもらいたい一心で手当てを行うのだ。

痛みとは恐ろしい。

誰も信じていない私が、罪の念に苛まれることになろうとは思いもしなかった。

無垢な笑顔は良心に訴えかけ、酷いことは出来なくなる。

「浮ついてる」

部屋の中に、3人分の寝るスペースと布団は用意している。

他人の家から拝借したもので自分の物ではないのだが、布団がなければ夜は過ごせない。

布団を被って眠っている幼女を見ながら、今後の事を考える。

今までどおり過ごせばいいのだが、幼女までいると話は別です。

幼女は宝物を見つけた。

用件がないのなら、放り出してもいいだろう。

しかし、心の中に芽生えた罪の重みがあるため、安易に放り出せなくなった。

幼女は何も知らない子供で、一人で生きていくには過酷すぎるのではないのか。

余裕のない頭の中に他人の事が浮かび上がる。

この時、一人で生きていく考えが揺らいでしまった。

「困った」

衣服や食料、他の物を大目に用意しなければならない。

幼女の面倒を見る必要はどこにもなかったのに、余計な火種を自分で撒いた。

悔いたところで、自業自得だって解ってる。

でも、幼女も同じ境遇ではないのかと自分を投射して、放っておけなかった。
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