妖魔03(R)〜星霜〜
曲を奏でるオルゴールを見たのは今日が初めてだ。

私が拾ってきたのだが、正体を解っていなかった。

幼女のおかげで、一つ学んだ。

心の奥に染み付く曲は時間の流れを遅らせる。

幼女は何を思って、曲を聞いているのか?

故郷、友人、家族、思うところはあるのだが、色々な想いが曲に詰まっているのだろう。

奇妙なめぐり合わせをした幼女の事を何一つ知らない。

幼女がいつ隠れ家から出て行くのかはわからない。

遠い関係のままというのは、傍にいる者として何かが足らない気がした。

少し歩み寄ってもいいのではないか?

幼女は不思議な雰囲気を持っており、他人とは少し違っていた。

魅力に引き込まれているのかもしれない。

「少しいいか?」

幼女はオルゴールを閉じて、黒い瞳で私の顔を見る。

世界に浸っていた幼女は無表情で、何を考えているのか読めない。

「昨日は酷い事をしてすまない」

幼女は謝られている理由を解っていないようで、返答がない。

ただ、瞳には傷の事など眼中にない明るさを秘めている。

幼女に理解という文字はあるのか?

何も理解出来なければ、幼女から何も聞き出せない。

「君の思惑はどうあれ、私は君に謝罪と感謝をしなければならない」

年端もいかぬ幼女も一人の生きている人間だからこそ、頭を下げる。

「私は人に痛みを与える事の重みを知らなかった。だからこそ、大切な事を教えてくれた君に感謝をしたい」

私は独り言のように言葉を紡いでいく。

「君の名前を知りたい」

何も知らないままの関係を打ち破りたい。

私は初めて他人の事を知りたいと思ったのだ。

数回、幼女は瞬きをすると、言葉の意味を理解したようだ。
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