妖魔03(R)〜星霜〜
「・・」

口を動かすが声が出ていない。

動かした回数から、二文字だ。

最初に嫌がった時も発声しなかったのは、出来なかったと思って良い。

言葉の理解が出来ないわけではないらしい。

私が五十音順に言葉を発していき、選択してもらう方法を取れば名前を知る事が出来るだろう。

「私が『あ』から『ん』まで言うから、名前にある一文字に当たったら首を縦に動かす。終わりまで続けるから、いいか?」

解りやすくするためにジェスチャーを加えて説明すると、頷いた。

最初に頷いたのは『ま』、次は『や』。

「終わり?」

頷く代わりにオルゴールを開ける。

マヤを摩耶という漢字にすれば、忉利天(とうりてん)に転生した人物のようだ。

親が付けたと思うが、深い考えがあったのかは解らない。

「素敵な名前だ。美しさを秘めている」

マヤはオルゴールに夢中で聞いていないが、言いたかった。

邪魔をする事は得策ではなく、満足するまで放っておく。

マヤと共に曲に浸るのもいいが、日課をサボれば出所の日が遠のく。

「行ってくる」

挨拶をし、マヤを残して街に向かった。

変わらないはずなの日常だが、心が軽いのは気のせいではない。

マヤと出会ってからの変化だと解ってる。

でも、マヤを全て信用したわけではない。

心境が変わったからといって、安易に信じると死を招く。

まだ様子を見るべきだ。
< 42 / 355 >

この作品をシェア

pagetop