妖魔03(R)〜星霜〜
「何故?」

「人に言ってはならない」

「秘術かよ」

「それが能力のルールだからだ。守られなかった時、能力は起動しなくなる」

とてつもなく不気味だ。

一体、どんな能力だというのか。

人に言うと効果がなくなるんだから、厄介なんだろうな。

死んだら逃げろって事は、アンデット系統しか浮かんでこないんだよな。

しかし、私達と言ったが、村妖魔も含めてなのだろうか。

何にせよ、長老の能力が発揮するような事がないことを祈ろう。

「長老さん、名前は何て言うんだ?」

「火野(ひの)だ」

「火野さん、約束は守る。2週間、俺は村で暮らすぜ」

「ありがたいよ。君の話に子供達も喜ぶだろう」

二週間で命が尽きる。

ないとは言えないが、生きる可能性を増やさなければならない。

もし、本当に体調が芳しくなくなったら、村から出るしかない。

それと、村がテンプルナイツに襲われるなんて事態も考えておこう。

今まで何も起こらず、平和に暮らしてきた村に俺という爆弾がいるのだ。

何も起こらないで欲しいという本心とは裏腹に、何かが起こる予兆を感じるのは悪い癖みたいな物だ。

だが、生きるための選択際は多い方だと思える。

時間が限られているが、飢餓、内争などの心配はない。

二週間、幼児達に日本の現状を教えて、肉体労働を行えば良い。

話す場合、良い部分だけを刷り込めば、変に夢を持たせてしまう。

それがどれだけの絶望を与え、堕落へ促すか、全て解っているわけではないが、予想はつく。

自我を持っている者として、全ての人間が楽な方向へと進むわけではない。

だが、楽をしたいというのは、当然の感情ではないだろうか?

だからこそ、悪い部分も知って、自分で判断して欲しいと思う。

幼児達に理解が出来るとは思えないが、頭の片隅にでも置いておけば良い。
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