妖魔03(R)〜星霜〜
「寝床は?」

「君は外で寝るんだ」

「野宿か」

別段、男だし野宿は苦痛ではないのだが、周りの家に明かりがついてるのを見るといじけたくなってくる。

ご飯もないから古の水を鱈腹飲むくらいしか出来ないんだよな。

うん、飢え死にするな。

更に言えば、外界には虫がいないわけではない。

寝てる途中で口に虫が入ったらどうする?

虫というフレーズと共に、あまりにショッキングな想像に頭痛がし始める。

「冗談だよ」

爺の戯言に誰が笑うというのか?

俺は審査員でもなんでもないが、誰が聞いても評価はDだと判定してしまうだろう。

「ウッドのところは年頃の妹さんがいるからね。ここはティアに任せよう」

確かに、兄としては妹のところに男を居座らせるのは気が引けるだろう。

しかし、いいのか?

ティアという名前からして女だぞ。

「ティアなら、君に優しくしてくれると思うよ」

「それはありがたいんだが、女の子だろ?いいのかよ?」

「構わないよ。ティア本人も大歓迎だと迎え入れてくれるだろう」

一体、どんな大きな心を持った妖魔なんだろうか。

「ティア、聞いているんだろう?」

「はいはいはーい!聞いてますよー!」

威勢のいい声が聞こえてきたかと思いきや、開いている窓から女が飛んで入ってくる。

「今日も元気がいいな」

「そうですう、ティアはー、とっても窓から入るのが得意なんですよー!」

見た目は10代で、金髪のセミロングに垂れた青い目、皆と同じような民族衣装を着飾っている。

しかし、誰も聞いちゃいねえことを、一人でに語り始めたぞ。

どこかしら、面倒くさそうな雰囲気が漂っている。

もしかして、泊まる代わりに押し付けたわけじゃないだろうな。

「今日から2週間、君のところに世話になる、名前は何だね?」

「葉桜 丞だ」

「葉桜?」

火野長老は訝しげな顔に早代わりする。
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