妖魔03(R)〜星霜〜
ティアは入り口に立っているかと思いきや、窓口から五間程度離れた位置に立っている。

「今日もいきますよお」

突如、走り出したかと思うと、窓に向って幅跳びの如く飛び立つ。

どこにも体をぶつけることなく、家の中へとホールインワン。

毎回、家に入るのにも、余計な体力を使っているのか。

こいつ、生粋のアホやわーと言ってしまいそうだ。

だが、ツッコめば犬のように喜んでしまう。

必死にインパルスを抑えていると、窓から人形劇の人物登場のようにひょっこり顔を覗かせた。

「ほいほい、丞さんもやりましょうよー。すっごい爽快感が得られますよー」

手を振りながら、今か今かと待ちわびている。

「い、いや、いらん」

抑えろ。

ここまでシリアスな雰囲気を象ってきたじゃないか。

アホのせいで、ギャグな世界に迷いこんではならない。

「えー!ティアのお誘いを断るんですか!?解りました、丞さんは一生独身貴族でいたいんですねー!」

「そこで何故、独身に繋がる?」

「ティアにはお見通しですよー。丞さんって何か幸薄な顔してますしー、女も寄り付かないですよー!」

何かが切れた音がした。

俺は窓に向って無言で走り出し、最高の距離でジャンプする。

「おおおー!ナイスジャンギャハ!」

「異界に落ちろ!」

窓を越えたや否や、ティアの顔面にドロップキックを決めていた。

体を横に三回転程度させて、地面に叩きつけられる。

「お前なー、シリアス気取りな俺を返せ!」

馬乗りしながら胸元を両手で掴んで、上下に振り続ける。

「おうおうおう、ティアが酔っ払っちゃいますよー」

「泥酔して、馬に蹴られろ!」

駄目だ、疲れてきたぞ。

チェンジが出来るなら、変人以外の誰かと変わって欲しい。

美咲、今すぐにでも脳内血管が切れてお前の元に行くかもしれない。
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