妖魔03(R)〜星霜〜
二人でというか殆ど俺が何往復かして、風呂に水を溜めた。

「はあ、はあ、お前、もっと動けるだろう?」

「ティアはあ、か弱いから一往復程度しか出来ないんですう」

その割には元気だ。

「じゃあ、ヘタってる丞さん、お願いしますう」

ティアはスキップをしながら風呂場へと入っていった。

あまりのふざけた態度に、覗いてやろうかと思ってしまう。

いや、ティアの事だから、それすらも喜んでしまいそうだ。

「はあ、やるか」

重ねられた薪をを手にとって、ふと気付いた事がある。

「あれ、火はどうやってつけるんだ?」

マッチもなければ、ライターもない。

火打石なんて物もないし、木の摩擦で火を起こせとでもいうのか?

一度もやったことないし、道具もないぞ。

仕方ないので、ティアに道具か能力を出してもらおう。

俺は家の中に入り、ノックもせずに浴室のドアを開ける。

予想はしていた事だ。

ティアは裸体のまま、ガチガチと歯を痙攣させながら水風呂に入っていた。

「じょ、丞さんは、へ、へ、変態だから覗きが、しゅ、趣味なんですねえ」

「今の状態で裸体を見ても興奮しないというか、哀れにさえ思えてくくるぞ」

「い、いいから、早く火を焚いてください。つ、冷たいですう」

「普通は、水がお湯に変わってから中に入るだろう」

「む、無能な丞さんには到底解らないですよう。てぃ、てぃ、ティアは、早くお風呂に入りたかったです」

ツッコミを入れたいが、可哀想なので事を早く進めてやろう。

「火を起こそうにも、元になる物がないんだよ」

「え、えっと、えっと、机の上に、マ、マッチが、あるですう」

この村にはマッチという現代向けの火起こしの物が存在するのか。

マッチ売りの少女の時代のお話にもマッチは存在していたし、あってもおかしくはないわな。

「お前、風邪引くから一旦上がれよ」

「い、嫌ですう。暖かくなるまで入るですう」

何と言う無駄な意地を持っているのだろうか。
< 69 / 355 >

この作品をシェア

pagetop