妖魔03(R)〜星霜〜
「しょうがないな」

放置しっぱなしにすれば、ティアでも風邪を引いてしまいそうだ。

馬鹿は風邪を引かないという言葉があるが、生き物である以上は不調をきたす。

余計な事を言う子ではあるが、世話になっているんだからな。

ティアが我慢大会を続けているのを尻目に、風呂場から出て行く。

言っていた場所には、マッチの箱が置かれてあった。

「見落としてたか」

マッチを手に取り、家の裏に回ると行動し始める。

燃えやすそうな薪を取ってカマに入れていき、用意してあった紙を燃やす。

燃えるまでの経緯を語りつくすのも面倒なので、努力の末とまとめておく。

数分後には釜の中の薪に火が灯っていた。

「げほ、村人らは、毎回こんな苦労してんのか」

現代人で居る事が、いかに楽なのかが解る。

「はあ」

自分の家が、少しだけ懐かしく思えてくる。

しかし、今の俺にとっては、求めてはならない物なのかもしれないけどな。

自分がした事で色々な人たちを傷つけたんだ。

これくらいで文句を言うなど、許されない。

「ふう」

薪の爆ぜる音が、静かな世界で唯一の音である。

静か過ぎて、風呂の様子が気になってきた。

「おい、ティアー!暖かくなったかよ!?」

「丞さん!とてもいい気分ですよー!無能より二歩前に進んだみたいですう!」

風呂の中から、震えた声が聞こえない。

初めてやった事なんだから、もっと評価を与えてくれてもいいところだがな。

「期待するだけ無駄だな」

自身の気持ちを言えば、ティアは追い討ちをかけてくるに違いない。

ティアと二週間、やっていけるかどうか不安だ。

でも、約束を果たさなければならない以上は、何かにすがり付いてでも前に進まなくちゃならない。
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