妖魔03(R)〜星霜〜
「チェリー」

俺を睨みつける視線。

「嘘つき」

胸に刺さる幼女の一撃。

「チェリー、そんな事を言っちゃ駄目」

「でも、話してくれるって言ったよ!」

「お兄さんにはお兄さんの都合があるの」

「そんなの知らない」

この調子では、確実に俺は嫌われてしまうんだろうな。

初日からチェリーのような子に嫌われるのは、明日からのやる気が出ないぞ。

「まあ、少しなら話しすよ」

「悪いよ。チェリーは寝る時間でしょう?」

「絶対に寝ない」

「いいよ。最初に言ったのは俺だしな」

明日の仕事が何時からかは解らないが、少しくらいなら問題はない。

「モンドも呼ばないとな」

人が増えるのは本意ではないにしろ、まとめて話したほうが楽である。

「モンドの家族は、寝てるんじゃないかしら」

「うん、いつも早いもんね」

「そうか」

正直、疲れている時には問題児は減ってくれたほうが助かる。

「ティアもお話したいですう」

「のわ!」

いつの間にか、民族衣装に戻ったティアが傍にいた。

「ティア姉ちゃん、おこんばんみー」

「おこんばんみーですう」

チェリーの母親らしき人物が、一瞬嫌そうな顔をする。

母親らしき人物の気持ちは痛いほど解る。

俺だって、ティアと自分の子供を絡ませたいと思わないからな。

「チェリー、やっぱり明日にしないか?」

「絶対、いやー」

「「はあ」」

俺とチェリーの母親らしき人物が同時にため息を吐いた。
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