不機嫌な彼
彼女が、椅子に座るのをベッドのパイプに腰をかけて眺める。
保険医、須堂彩希。
いつ見ても、束ねられられただけの長い髪に、黒縁眼鏡。体の線は細いから白衣は似合うけど、出るとこも全く出てない。
「大丈夫だよ。彩希は嫁にはいけないから」
…まだね?
「余計なお世話です。」
彩希は眉を潜めて思いっきり不機嫌そうな声を出す。
「…だけど、あんな無防備に寝るな、最悪。無い胸寄せても目の保養にさえならないから」
俺の淡々とした一言に、彩希は面白いくらい一気に真っ赤に表情を変えた。
本当に、困る。
あんな姿、俺以外の誰かに見られたらどーするわけ?
地味な怒りは悪戯心と一緒にフツフツと湧き上がる。