女王様御用達。
女王とのやりとりを思い浮かべつつ、僕は馬車に揺られながら向かいに座る男を眺めた。
「……何だよガキ」
「クロード・スチル。女王騎士だ。たかが悪人がガキ呼ばわりするな」
「はっ。女王騎士って10歳そこらのガキ雇わないといけないほど財政難なのかよ」
「確かに財政難だな。お前という税金食い生かしているくらいだからな」
「減らず口のガキが」
奴は僕に一切顔を向けないまま悪態をつく。
早く肥料になればいいのに。
僕も鼻で笑う。
「馬車、尻いてえし」
凸凹道が続くのでよく揺れる馬車に奴の機嫌は悪い。
クッションも悪いからなおさらだ。
女王騎士ならば、本当はいい馬車が提供されるが今回それはない。
「……今から行く国、なんての?」
「シルルク。衣料の文化が栄えている国だ」
「へー」
「ちなみにお前が体液垂れ流して汚した図書館館長室の絨毯もシルルク製だ」
「黙れ」
シルルクはあまり国交がない国だから、変に馬車が豪華だと向こうの国を警戒させる。
僕も甲冑や制服ではなく、普通の私服だ。
「なあ」
「何だ」
「そのお前の横にある短い剣、木だろ?木剣だろ?」
僕の必要最低限の荷物。
防具は一切持たないが、これだけは持ってきた。
黒い木をヒモで組み合わせただけのシンプルな剣。
「見てわからないか?」
「……お前護衛やる気ないだろ」
とにかく、馬車の中は険悪だった。
こちらは悪人と同じ空気を吸うのさえ嫌だし、向こうは自分にあてがわれたのがガキだと不満を露骨にしていた。