女王様御用達。

「もうすぐ国境ですよ」

運転手の声に、僕は女王からの贈り物を思い出した。


「そうだ。女王から貴様にだ」

「何?」

「シルルク滞在中の貴様の名前と履歴。頭にたたき込んでおけ」


彼はめんどくさそうに僕からのファイルと、手帳式の身分証明書を受け取り。




「………………は?」



と、ファイルに穴が開くくらいのぞき込んだ。






シルルクへは二日かかった。


国を三つ経由し、目的地である宿屋「シルルソウ」へついた頃には僕も奴もつかれていた。

いや、彼はもう一つつかれる理由があった。


「ご予約のクロード様と」

「クロードは俺です」

僕は手を挙げる。

ということは…と柔らかい金糸を三つ編みにした彼女は、奴の顔をみてこらえきれず吹いた。






「ごめんなさい。ポチ・プードル様ですよね。いらっしゃいませ」





首をぐりっと回し、こちらに不満の目を向けたようだったが僕は気づかないふりをした。


奴の戸籍はポチ・プードル。

ちなみに学歴は犬の訓練学校を卒業したことになっている。

正式なうちの国の発行した身分証明書なので、疑われはしなかったが。


国境を越える度にこんな調子だから、奴も機嫌がわるい。


しかし、捕まって調べられたらお前の過去がばれると釘をさしてある。


奴の本名の方は国外でも猥語として広がっているので仕方がない。




まったく、国の恥だ。
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