女王様御用達。
「こら、馬鹿犬」
僕が一声かけ、木刀で小突くと彼は僕と勘違いしたらしい。
「お、おう、ガキ」
安心したようにため息つく彼に、噂しながら人だかりが消えていく。
「お前、あんなガキと間違うな」
「ほら、木刀もってたろ?あの子」
こいつの認識は、性別と大体の年齢層と体色と毛の色と目の色と持っているアイテムと環境で判断するらしい。
資料によれば視力に問題は無いし、人間以外の物の見分けにも難はない。
ただ、人間の顔が彼には同じに見えるようなのだ。
笑っている、怒っている、その表情の確認はできるらしい。
視力ではなく長期的記憶の問題のようだ。
彼はいつものことらしく、何事も無かったようにきょろきょろと楽しげに眺めている。
「このアイドル流行っているのか?同じ奴のポスターがいっぱいだ」
「馬鹿。よく見ろ。これはシルルクの王子達だ。王位継承を投票で決めるらしい」
兄弟で顔が似通っていれば、もはや差異の判別は不可能らしい。
「あ、ほんとだ名前が違う」
節穴の目とはこのことだな。
僕はため息つきながら思った。
「アイドルみたいだな。顔とか格好が」
たしかに。
25~16くらいの三兄弟たちが、それぞれポスターの中、海で半裸だ。
選挙というより人気投票のイベントのようだ。
王子達のキーホルダーやぬいぐるみ、フィギュア。
何故か特産品である衣料よりも目立ってよく見る。
「……写真集まで……」
本屋らしいその店頭で、それぞれ3人の写真集が山積みで置いてあった。
一番若い王子の写真集がよく売れているみたいだ。