女王様御用達。
コンコンコン。

また来たか。

「黙れ、犬コロ」


『クロ君、私』


レースさんの声だ。

ごめんなさい、そう声にしようとした僕の声が出てこない。


拒否反応?

……おいおい。

それじゃあ、ポチ野郎よりも症状が重いじゃないか。


『あのね。御飯にぎったから、部屋の前に置いておくからそれだけでも食べてね。それと、オレンジジュースは取ってもおいしいオレンジから絞ったのよ』


また子供扱い。

子供万人がオレンジジュースが好きとは限らない。

特に僕はあの酸味が駄目だ。


『あのね、クロ君』

それから、彼女はしばらく間をおいた。

本当に扉の向こうに人がいるのか分からなくなるくらい、間をおいた。


『……はあ』


重い重い、大きなため息の後、扉にもたれて座り込む気配がした。







『うん。私、バケモノなんだ』







彼女はその台詞を、元気良くハッキリ言った。






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