女王様御用達。
『遠い遠い先祖が醜い醜いバケモノで、人を食べる程の凶暴さを持っていたんですって。変な踊りを踊って、この国に大雨を降らせたそうよ』



レースさんは、僕が読んだ絵本より残虐な怪物像を笑った。





『この国ではね、国語の授業で国の歴史を習うの。文字も計算も、バケモノの悪事を強調する内容になっているの』




「……バケモノは絶対的な悪であり、国は今も生き残るバケモノを生かしその権力と慈愛を強調させるため、いわば『象徴』として生かしているわけだ」



『クロ君は小さいのに難しい事を考えるのね』




「……国中から悪役にされることに疑問は持たないのか?」



口に出して、僕は敬語が無くなっている事に気づいた。

やはり僕は、無意識のうちに彼女を見下ろしている。

彼女を絶対的な悪者として。




『だって、国の人たちを苦しめたバケモノだから仕方ないじゃない』




そうか。



「シルルクの、人間の、考え方ですね」



『うん。生まれてこのかたシルルク育ちだもの』





この人もバケモノが阻害されるのは当然と、他の人間と同じく洗脳されていた。


その運命に、なんの疑問をも持たないように。
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