女王様御用達。
翌日、僕とポチは買い物に出かけた。

町までの徒歩、もちろん僕らの仲は険悪だった。



「……馬鹿が。この馬鹿犬が」

「……馬鹿犬で結構、コケコッコー」



やや貧血でふらふらしながら、犬は僕の隣で鼻で笑った。


してやった、そう言わんばかりだ。


「あのな、お前はいいことをしたと思っているだろうが。てめーがやったことはリュウズを最悪戦争にしかねない情報漏洩だぞ」


「お前がそこんとこうまくやればいいんだろ?天才」


「馬鹿、あの宿屋の回りは常に敵ばかりで盗聴されてないとは言い切れないんだ。しかも、あの宿屋に長期で泊まる客ということでそろそろ目を付けられているはず」


「そんときゃ、宿屋を変えて隠れてレースさんに会いに言えばいいだろ」


「それをばれたらますます怪しまれるだろ!!」


これだから、ガキは。

犬はため息をついた。


「……それでも、レースさんには希望を与えられただろ」




希望?

ふざけるな。



「はっ、これで何も出来なかったら俺とお前は絶望を与えただけだぞ?」




「……だから絶対に、レースさんを救おうと思うだろ」




自分を追いつめるために、僕や国を巻き込むな。


僕は目を細めた。





「お前がそんなことをしなくても、レースさんの状況は世界中に伝える。僕は女王から与えられた命令は絶対にこなす」





奴も口の端を斜めに上げ、空を見上げる。

僕より確実に長い足で、大きく地面を踏む。



「どっちみち、俺も俺の黒歴史葬る為に物語を書く」




その会話以降、長い道は無言だったが、不思議と悪い気はしなかった。


余計な事をたくさんしてくれたのに。


コイツ、悪人なのに。




僕は、悪人が好きになった訳じゃない。



ただ、コイツに慣れた。


それだけのことだった。
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