女王様御用達。
そんなストーカーさんは、どうも尾行の素人らしい。

たまに振り返っても、びくっと体を震わせて反応が遅い。



他に仲間はいそうにない。

だが、危険度がないとも言い難い。


「ポチ、どっか見通しのいい広いところ見なかったか?」


「さっき、パン屋の向こうに花がいっぱいに咲いた公園を見たぞ」


「とりあえず、そこで休む」


もしもの時は、そこで戦闘になるかもしれない。


僕は腰につけた木刀を見つめた。





公園はシルルソウが埋め尽くされた平坦な場所。


花畑の中に子供用の遊具が少なくある。


「ママ、ここにちがうはながあるよ。くろくてへんなかたち」

「それも、シルルソウよ。先祖返りしちゃった花なの」


先にいた親子が花を摘んでいた。

1人は3歳くらいの女の子で、もう1人は若い母親だ。

まずいな、どこかに移動してくれないものか。

赤の他人とはいえ、人質とか取られたら非常に動きにくい。


「シルルソウは、王様が元々はこの変な花を、他の花みたいに綺麗にしてあげたの。でも、たまに昔のこんな花が咲いちゃうことがあるの」


すこし離れたところに歩くか。

しかし、赤ずきんは、刻々とこちらに近づいてくる。


「どうしてこんなおはながさくの?」


「うーん。……ちょっと難しいかもなぁ。大きくなって勉強すれば分かるわ」


手をつなぎ、青いシルルソウを握り、公園を出る親子。



その横を赤い頭巾がすれ違い、こちらに近づいてくる。


人質にする汚い奴ではないらしい。


「ポチ、お前はもしもの時にその鈍足で逃げる準備だ。準備体操しとけ」


「俺様、方向音痴だけど?」


僕は剣に手をかける。


「死ぬよりましだろ?」


ポチは赤頭巾を見ながらアキレス健を伸ばしはじめた。





赤頭巾は、僕たちに対峙するように距離を置いて止まった。






シルルクの少し強い風が、シルルソウの花びらを巻き上げる。

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