女王様御用達。
毛深い身に、プラスチックのような光沢と堅さのある腕、その先にあるかぎ爪。


人間と言うより、それは明らかに昆虫の持ち物だ。


おそらく、ポチが見た物だと思うが。


片目は明らかに人間だが、もう片方の目の部分に縦に八つ目がついていて。

その八つの目にはいずれも白目が無く、イメージ的に何か見覚えがあるのだ。



そう、何か、虫で。




「一族の中でも、その形状が虫に近かったと表している記述がある。これはただの変異じゃなさそうだ」




ただし、この虫のパーツが現れる遺伝はかなり低い。

おそらく劣勢遺伝というやつだろう。

人間とあまりに性質がちがうそれは、そう簡単に遺伝できないらしい。


顔を覆い、ため息をつくポチ。

精神が定まらないらしく、床は失敗作の紙くずだらけになっていた。




「おそらくだが、『バケモノ』とされた先代の男性も、ただの『個性的な旅人』ではな
さそうだ」




しかし、この先代の男性は一体何者なのだろう。

赤ん坊に出てくる形質を見ていると、その姿が想像つかない。





そして、その劣勢が出る確率が、何故か代を重ねるごとに増えていた。



……本来なら彼の血は薄まっていくはずなのに。
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