女王様御用達。




……気配を感じたのは、だらだらと童話が半分書き終わった日の深夜のことだ。

何となく目が覚め、月明かりの中に動く気配を薄目で見た。

大きな男の影。

体を鍛えているらしく、腕が足が馬鹿太い。

黒いぴっちりとした体のラインが出るスーツを着ている。

関節部に特殊な金属が入って、時折キラキラ光る。

こかで見た隠密の衣装だ。

明らかにポチやレースさんと違うそれは、じりじりと僕のベッドに近づいてくる。

歩き方からして軍人っぽい。

僕は寝息を立てるふりをする。



「……よい子の寝込みを襲うのはあまり関心がしないな」



やはり聞き覚えの無い低い声が小さく聞こえた。

人数は1人だ。

子供の相手はこれで十分ということか。


こちらはパジャマ。


……元々防具は持ってこなかった。



僕に、刺客を1人送ってきたとは考えにくい。

1人という人数から、おそらく僕の正体はばれていない。

意図はまだ分からないが、刺客を送るなら数人だろう。


ということは、ポチ、大丈夫かな。


いや、大丈夫じゃなさそうだな。


月影に、ナイフの光が見えたとき、僕は寝たふりをやめた。



ぐるりとベッドの上で転がり、降ってきた刃物をかわす。


「!?」

被っていた毛布を男に投げ、抱いて寝てた剣を掴み、刃物を持っ手を弾く。


「起きてやがっ!!」




「……シルルクの兵士は、子供もまともに殺せないのか?」




両手で剣を握り、みぞおちを叩く。



その大きな体が、ドアのところまで吹っ飛んで転がる。


「!?」



ふらりとみぞおちを押さえながらも、受け身を取る兵士。

割と衝撃吸収が出来る布素材らしい。



シルルクの衣装は、やはり優秀だ。
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