女王様御用達。
「レースさんは?レースさんはどうした!!」
「そこまでまだ手が回らない!!」
「この無能女王騎士!!」
ポチは1階客室の方へ駆け出す。
「馬鹿!!」
体力皆無。
魔法能力0。
特殊技能無し。
記憶能力に問題のある重度の方向音痴。
しかも空気も読めない。
「お前が1人助けに行っても何も出来ないだろう!!」
足音が遠くなる。
「馬鹿が」
僕はポチの部屋に入り、ライトに火を付ける。
光魔法、覚えておけばよかった。
僕は舌を打つ。
理論は僕の中で理解できている。
ただ、僕の体に合わないらしく、どうしても術が発動しなかった。
「レースさん!!レースさん!!」
扉を叩く音とガチャガチャドアノブを回す様子を耳で聞きながら、僕はレースさんが無事かどうかの可能性を考える。
何故僕らは襲われたのか。
しかも闇討ちで。
1つは、僕らの身元が割れた可能性。
これはない。
それならば、女王騎士である僕の方に1人しか兵士をよこさないことはしない。
2つは、レースさんをまたバケモノに仕立て上げるための工作。
レースさんが知っているバケモノには、人間を食うという習慣があった。
ここで、レースさんの宿で客が2人不審死を遂げれば、レースさんを処刑する立派な理由にはなる。
どちらにしろ、レースさんを今殺すのは得策ではない。
彼女を葬るならば、もっとパフォーマンスに飛んだ方法をとるはずだからだ。
彼女が襲われている可能性は低い。
しかし、レースさんが部屋から出てくる様子はない。
3つ目はレースさんとか国とか全く関係なく、ただの強盗や通り魔の可能性。
それならばレースさんも殺されている可能性も無くもない。
しかし、動き方が軍隊敵な動きだったからそれはないだろう。
装備といい……子供に手を抜いたとはいえ、おそらく国の暗部だ。