女王様御用達。
「庭からリンゴを取ってきますね」
王子と僕らを食堂の席に座らせ、彼女は慌てていた。
レースさんは赤らいだ顔を出来るだけ見せないように、ぱたぱたとせわしない。
僕は席を立ち、レースさんをおいかける。
「あ、レースさん」
「何?」
「僕に枝を切るためのハサミを貸してくれませんか?」
「剪定ばさみ?」
彼女は少し外に出てハサミとを僕に手渡す。
「ケガしちゃ駄目だよ」
不思議そうにしながらも、早くこの部屋を出たかったらしい。
「行ってきます」
やや言葉数少なく、また外に出る。
食堂に戻ると、好奇心旺盛そうな2人の視線に晒された。
「何に使うんだ、お前」
「ちょっと工作だ」
僕は自分の剣をハサミに通す。
「え」
ポチはその行動に理解しがたく眉をひそめた。
ちょん、ちょん。
剣を10㎝ごとに切っていく。
「なんだ、おちびちゃん。可愛いところあるね」
僕は王子に背をむけ、床に座る。
その背を向けて出来た死角で、剣を10㎝ごとに伸ばし、また切る。
この年で木製属性を使いこなすのは難しいと言われている。
見た目ただの枝でしかない剣が、自由で伸びることを根掘り葉掘り聞かれたら厄介だ。
そして人知れずその切った剣の切れ端にちょっと尖れと念じる。
まるで針のように切り口が細く棘になる。
棘になったそれを、広げたハンカチの上に載せていく。
「レースの一族の事が載った赤い本、君は見たことある?」
彼は向かいに座るポチに聞く。
ちょん、ちょん。
剣をハサミで切る音が部屋に響く。
「ああ……見ました」
ポチは顔を手で覆った。
その隠した目は困ったように僕を見つめる。
「どうだった?」
「どうだったって……赤ちゃんの写真を見ただけで卒倒しました」
彼は頷く。
「うん。グロいよね。アレ」
違う。
王子が聞きたいのはそう言う事じゃない。
あの赤い本で何か気づかなかったか?と言うことだ。