秋霖のビ
二本目のビールは苦かった。

喉をチクチク刺しながら流れていく。

今度はチビチビと。ゆっくり、降る雨に合わすように。

心なしか、波が穏やかになった気がした。

そう思うと、さっきまで熱かった体が急に冷たく感じ、微かに震えてきてしまう。

一度震えがくるとなかなか治まってはくれない。ぎゅっと缶を握り身を固めた。

雨もそろそろ、あがるだろう。

いつまでもとか、ましてや永遠なんてありえない。

ないのなら誰かが、いや、私がそれを作りたかった。本当は。

残り半分。一気に飲み干したところで、世界は何ひとつ変わらない。

夏の後には必ず秋がやってくる。

それを私は受け止めなくてはいけない。

寒さもピーク。今度こそ、立ち上がれますように。

目をつぶって、残りを大事に飲み干した。
< 5 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop