突然の幸運
恭子は俺にこんなことを言われるなんて思ってもみなかったという顔だ。それでも気をとりなおして


「あたしにそんなこと言っていいと思ってるの!お父様に言いつけるわよ」


コイツはバカか


愚かだな……


「お前は幾つだよ」


俺は恭子を嘲笑いながら言ってやった。


「勘違いするなよ。取引を停止して困るのはうちじゃない。お前の父親の会社だ」


それから今までで一番ドスのきいたこえで言った。


「二度と俺と彼女の前に現れるな」


そうすると恭子は震えながら去って行った。


…やっといなくなった


俺は茜のほうに向かって歩いた。茜を怯えさせないようにさっきとは全く違う、いもの表情と声で。


「ごめんね。嫌な思いさせちゃったね…もう大丈夫だから泣かないで」


茜をこんなに泣かせてしまった自分がゆるせない。


俺は茜の目元にキスをして何回もごめんねと言った。


茜は「セツナは悪くないよ」と笑って言ってくれた。


茜が笑ってくれたから僕もなんとか笑うことができた。


ごめんね…


―それと


ありがとう


「早く家に帰ろうか。恭子のこともちゃんと話すよ」
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