突然の幸運
ーーいけないいけない。こんなんじゃ茜を怖がらせちゃうよ


あまり茜を待たせるのはよくないな。


カップを持って僕はリビングに向かった。


リビングのソファーを見ると僕が出ていったときと同じように大人しく茜は座っていた。


「お待たせ。外暑かったし泣かせちゃったから水分補給したほうがいいよ」


そう言って僕はコップを渡した。


「ありがとう」


茜は笑顔で言った。


それを見た僕は隣にひっついて座った。そうしたら茜は驚いていた。


「ちっ近いよ~」


「ダメだよ。これから大事な話するんだから」

僕は優しくそう言い、今度は真剣に


「逃げちゃダメだよ…」


そう言った…


僕の話を聞いてもらうために。


「恭子とはなんでもないよ」


「付き合ってたんじゃないの」


そんなはずないよ。


「違うよ。僕にはお嫁さん候補が何人もいたんだ」


「何人も?」


出来ることなら言いたくなかったな……でも、誤解されたままはもっとイヤ。


「そう、その中の一人に恭子がいたんだ。候補の中では一番有力だったから一時期は結婚の話まで出ていたんだ」


「どうして結婚しなかったの?」
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