みどりちゃんの初恋

「………ちぃ?タツキさんが見てる」

 タツキさんに聞こえないように、小声でちぃに話しかければ、

「………いいのよ。あんな奴」

 と小声で返ってきた。それも切なそうな声音で。

「……ケンカ?」

「まあそんなところ」

 ちゅっと頬にキスを落としたちぃは、ヒロっちから受け取った資料を開いた。

 ガタガタっと椅子を動かして、後ろにあった窓の外を眺める。

 今日は雨降りそう。

 窓を開けてそのサッシに腕を乗せて顎を乗せて目を瞑れば、微かに雨の匂い。

「みーどりちゃん」

 声に目を開ければ、隣でまったく同じ格好をしたハヤシっちがいた。

 「暇だね〜」とあたしが呟けば、同じく「暇だね〜」と返したハヤシっち。

 なんだかおかしくて思わず笑えば、ハヤシっちも釣られて笑った。

「球技大会何出るの?」

「俺?俺はー、テニスにでも出ようかなぁ」

「へぇ〜! ヒロっちは?」

「確か……バスケだったかな?」

 ………よし。決めた。

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