テアトロ・ド・ペラの憂鬱
ガチガチに固まったセッタに、どんだけ過酷な仕事だったんだ、と同情していた分だけ、全員から気が抜けた。
「猫か…」
「ネ、コ…」
ガフィアーノとボウラーが、今度は手持ち無沙汰にリキュールボンボンをいじりながら呟いた。
「猫かあ……」
まさか猫を殺す為に、培ってきた技術ではなかっただろうに。
実は動物好きなセッタのやるせなさを思う。
その場に居た全員が、脳内でセッタのクライアントに弾を一発ぶちこんだ。
「…よぉ、始めてるな」
妄想。
ガフィアーノとアコの一発がクライアントのドタマをぶち抜いた瞬間、新手の男が現れた。
ホットミルク色のアルマーニを嫌味に着こなしやがる黒髪の伊達男に、全員が順に挨拶。
「よぉ、カーラ」
これは、ピピ。
「早かったね」
ボウラー。
「「おかえり」」
ガフィアーノとセッタ。
「カーラ、おかえりなさい。グラッパあるよ」
最後に白々しくご機嫌を取ったのは、勿論、アコ。
カーラ――と呼ばれた長身の男は、上下で揃えたアルマーニでアコとセッタの前に立ちはだかった。
さすがに傘は指してたらしいが、水分を湛えた黒髪が威圧的。