「……!!」


「!あ、ごめん……」



藍希が大変なことを言ってしまったと、おろおろしだす。



「(楽しくなさそう、か…)」


「ご、ごめん!楽しいよね、ずっとやってるんだし…」


「…いや、楽しくないよ。藍希の言う通りだ。」



そうだ、楽しくなんかない。


テレビなんて出たって楽しくない。


好きでもない女にきゃあきゃあ言われても嬉しくなんてない、楽しくない。




歌なんて歌ったって、何の役にも立たない。



「……俺、あの仕事嫌いだ…」


「自分で選んだんじゃないの…?」






「………母さんが…母さんが喜ぶから…」







全部話した。



藍希には話せると思った。




俺が小学生のとき母さんを亡くしたこと、


父さんは裏関係の仕事で、今はどこにいるのかも分からないこと、



10歳年上の兄貴がいたけど、遠い昔に家を出て行ったこと………




藍希は、黙って聞いていてくれた。


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