「だから、この仕事…俺がTV出たりすると母さんが喜ぶからって、始めただけなんだ…」



「………………」


「…父親がやくざだなんて笑っちまうだろ、家はダメ親父にダメ兄貴、ダメダメ人間しかいないんだ……」




そうだ、俺だって………






「……楽しめばいいじゃない、」




「………?」


「私に言えたことじゃないけど、メンバーの皆のこと、好きなんでしょ?楽しめばいいじゃない、お母さんのために仕方がなくやるんじゃなくて、メンバーと一緒に楽しむためにやれば…」




楽しむためにやれば………





「……生意気、年下のクセに。」


「あっ、ひっどーい、私涼君とは1ヶ月しか離れてないのよ。」


「だから年下じゃん。」



隣に座っている藍希のおでこをコツンと小突く。



「ひっどーい、女の子になんてことするの!えい!」



藍希も俺の肩を押し返す。


その力があんまりにも弱すぎて、口元が緩んだ。



「ばーか、そんなんじゃダメだよ。俺だって男なんだから。」


「こんな細いのにどこからそんな力出てくるの。」


「藍希に言われたくないね。」





暖かな昼の光が、2人を包んでいた。
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