どのくらい走ったんだろう…。


無意識にただ走った。


気持ちは楽になっていた。



「藤井君!!」


後ろから聞きなれた声が聞こえた気がした。


でも、振り向かなかった。



人間なんて、どうせあんなやつらばかりだ。



さっきの男子……



「(俺…退学かもな)」


着いた場所は、屋上だった。



「藤井君!!」


確かに聞こえた。


真後ろだった。



「…なんで着いて来てんだよ。」


「だって、っ、藤井君、出て行っちゃったんだもん…」



藍希の息が必要以上に切れていた。


「授業は…お前も呼び出されるぞ。」


「いいの、だって藤井君…」



言いかけて、藍希は少し俯いた。



「…何だよ。可哀想とか言うなよ、嫌いなんだ。」


「……私と…っ…」


言いかけたところで、藍希の体がぐらっと傾いた。


< 8 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop